2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧
シュルジ夫人の二人の美貌の息子に近づくためシュルジ夫人と出来るだけ長く話し込み、可能な限り懇意にしておく必要性を感じていたシャルリュス。だがしゃべり出すと止まらない悪癖ゆえ話題はシュルジ夫人が出席するつもりでいたサン=トゥーヴェルト夫人主催…
シュルジ夫人はゲルマント公爵の現在の愛人である。元愛人はアルパジョン夫人。百頁ほど前の箇所で<私>が声をかけられた時、とっさに名前を思い出せなかったのは後者のアルパジョン夫人。ゲルマント公爵の現在の愛人の名は思い出すまでもなくすんなり出て…
会場に入ることが許されなかったのかもしれないと思っていたスワンがやって来た時、<私>は思わず安堵を覚える。だが安堵のうちに或る種の「悲しみも混じっていた」。スワンの病気は思いのほか重篤化していた。「ほかの招待客たちは」スワンの急激な変貌ぶ…
シトリ侯爵夫人が<私>に近づいてきた。少し離れたところにいるゲルマント公爵夫人を指差して「あきれるしかありませんわねえ、こんな生活が送れるとは」といった。プルーストはなぜシトリ夫人が露骨にそんなことを言うのか、第一、第二と、珍しく理由を列…
<私>はブイヨン公爵に会ったことがある。だがこのパーティーの日の午後に目にした時、それがブイヨン公爵だとは全然気づかなかった。ゲルマント侯爵の話を聞いていて始めて思い当たったのだった。忘れ去った人物ではまるでなく習慣・因襲に従って気を抜い…
ゲルマント侯爵はドレフェス事件を巡ってドレフェス支持に回ったスワンを長々と非難する。これまで面倒を見てきてやった恩を仇で返すような男だと憤懣やるかたない激怒ぶり。 「『でもスワンについては、率直に言ってあの男どもにたいする振る舞いは言語道断…
ゲルマント侯爵夫人はいつもパーティーの人気者。社交界入りを果たした新進の作家や劇作家が夫人のもとを訪れてきて是非近づきになりたいということなどは日常茶飯事だった。しかし夫のゲルマント侯爵は浮かぬ気分。嫉妬しているわけでは全然なく、そもそも…
ゲルマント公爵夫人とともにサロンを回っていると、再び「これから先もけっして間違えずに識別できる特徴のある声が聞こえてきた」。ヴォーグーベールの声だ。しかしなぜ「識別できる」ようになったのか。シャルリュスの大声との非等質的な対話を繰り返し耳…
通例、人間は、多少の個人差はあるものの思春期を通過するうち、人間関係に対して一定の免疫を獲得する。<私>は偏屈な社交界の中で、それなりにせよ或る程度の免疫を持つことができた。知人友人たちが不意に露呈してしまう不注意な身振り・発言について、…
社交界がいかに空虚なものかを語りながらプルーストは不意にこんなフレーズを挟み込んでいる。 「真の作家は、多くの文士につきもののばかげた自尊心など持たないから、つねに自分をことのほか褒めたたえてくれていた批評家の文章を読んでいて、ほかの凡庸な…
<私>の目にふと、シャルリュスの同性愛相手ヴォーグーベールの姿が入った。エリート外務官僚である。シャルリュスと「同様の欠点をいくつか備えていたとしても、それをごく淡く反映していたにすぎない」とある。 シャルリュスの会話は同性愛者だと悟られる…
シャルリュスに失礼な態度を取り続けていたことは確かだとしても、そのことで激怒するようなシャルリュスではないと<私>は考えていた。シャルリュスに対して失礼ではないかと叱責したのはあくまで<私>の両親である。なぜ叱責したのか、というより<私>…
ゲルマント大公妃の夜会に招待されることになった<私>。シャルリュスの紹介がなければゲルマント大公妃に近づくことは決してできないと言われていたにもかかわらず、あっさり招待状が届いたので出かけたのだった。本当だろうかと内心不安ではあったものの…
プルースト作品では<私>が語るという方法を取っているにもかかわらず、プルースト自身の語りとしか思えない箇所がしばしば出てくる。そのうち、おそらく避けられないと思われる部分が差し当たり二箇所ある。その点について述べたい。 (1)「これらソドミ…
「ソドムとゴモラ」には色々な組み合わせが考えられる。男性の中の男性と男性の中の女性、女性の中の男性と女性の中の女性、男性の中の男性と男性の中の男性、女性の中の女性と女性の中の女性、女性の中の男性と男性の中の女性、男性の中の男性と女性の中の…
振り返ってみよう。シャルリュスが始めて<私>の前に出現した時のことを。身体の一部としてだった。<まなざし>としてである。ジルベルトに淡い恋心を抱きながらその姿を追っていた時、不意に何やらただならぬ<まなざし>が私に注ぎ込まれているのを感じ…
シャルリュスの態度は瞬く間に変容する。しばらくして読者はシャルリュスという名の一つのパラドックスを目にしていることに気づく。シャルシュスは「あれかこれか」ではなく「あれでもありこれでもある」状態を生きる。もっとも、アルベルチーヌのように異…
ゲルマント公爵夫人に関心を寄せる<私>にシャルリュスは「ゲルマント大公妃の威光」の前ではたいした名ではないという。そこで、もし近づきになりたいのならと、こう続ける。「私と私の<開けゴマ>がなければ、大公妃のお屋敷には近づくことはできん」。 …
ますます態度を軟化させるシャルリュス。「あっ、そうだ!大事なことを忘れていた」と不意に言い、近いうちに再会する機会をとっとと設定しようとする。<私>との関係を「込みいった問題」と位置付け、その解決には時間がかかるという。とすればシャルリュ…
二転三転するシャルリュスの言動。<私>を馬車で家まで送り届けるという。その後は「ブーローニュの森へ月見にでも行くとするか」とふいに思いついたかのようなことを口にする。同時にシャルリュスは「磁気をおびたような二本の指で私の顎(あご)をつまん…
しゃべりつづけるシャルリュス。<私>を突き放したかと思えばたちまち<私>に居残るよう慎重な身振りを見せつける二重性。シャルリュスは狂気に陥っているのか?陥っている。バルベックで出会った時もそうだった。シャルリュスの言語の特徴だが、罵倒中傷…
シャルリュスの言説は主に三箇所に分けて述べられている。一箇所ごとがとても長い。けれども言説には一貫性があり、ゆえに訴えていることは徐々に明らかになってくる。気になる点を少しずつ追っていこう。 「『労力を費やすに値する人のために骨を折ることほ…
レヴィナスのいう<他者>には<他なるもの>という位置付けがなされている。前回引用した。 「レトリックがともなう洗脳を、煽動を、教育を放棄することは、他者の正面から、真の語りをかいして近づこうとすることである。他者の存在はその場合、いかなる度…
プルーストは「写真という最新の技術」を利用してアルベルチーヌを固定しようとする<私>の思いに注釈を与えている。 「写真という最新の技術ーーーそれは、近くで見ると往々にして塔ほどに高いと思われた家並みをすべて大聖堂の下方に横たえたり、いくつも…
小津安二郎監督「晩春」の中に「制度としての顔」を一挙に無効化させてしまう場面がある。娘役の原節子が結婚することを決心し父親役の笠智衆とともに京都へ記念の観光に訪れた際、二人は宿で「性を異にする親子が並んで眠るという状況」へ難なく入っていく…
「愛と嫉妬」というテーマ。ほとんどの読者は「愛する」とはどういうことかについて大いなる勘違いを犯してきた。プルーストはそれがどれほど暴力的かを明るみに出す。だからといって殴る蹴るといった暴力行為をともなうわけでは全然ない。だからなおさらア…