Hakurokin’s 縁側生活

アルコール依存症/うつ病/リハビリブログ

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

Blog21・シャルリュスによる<冒瀆>/偉大なる<自然循環>

シュルジ夫人の二人の美貌の息子に近づくためシュルジ夫人と出来るだけ長く話し込み、可能な限り懇意にしておく必要性を感じていたシャルリュス。だがしゃべり出すと止まらない悪癖ゆえ話題はシュルジ夫人が出席するつもりでいたサン=トゥーヴェルト夫人主催…

Blog21・シャルリュスの<まなざし>からプルーストの言語への遡行

シュルジ夫人はゲルマント公爵の現在の愛人である。元愛人はアルパジョン夫人。百頁ほど前の箇所で<私>が声をかけられた時、とっさに名前を思い出せなかったのは後者のアルパジョン夫人。ゲルマント公爵の現在の愛人の名は思い出すまでもなくすんなり出て…

Blog21・プルースト文学と<別の価値体系>の多数性並びにその生産

会場に入ることが許されなかったのかもしれないと思っていたスワンがやって来た時、<私>は思わず安堵を覚える。だが安堵のうちに或る種の「悲しみも混じっていた」。スワンの病気は思いのほか重篤化していた。「ほかの招待客たちは」スワンの急激な変貌ぶ…

Blog21・シトリ侯爵夫人とゲルマント公爵夫人との<残忍性>の違い、両者の官能の消息

シトリ侯爵夫人が<私>に近づいてきた。少し離れたところにいるゲルマント公爵夫人を指差して「あきれるしかありませんわねえ、こんな生活が送れるとは」といった。プルーストはなぜシトリ夫人が露骨にそんなことを言うのか、第一、第二と、珍しく理由を列…

Blog21・<プルースト><坂口安吾><マルクス>、それぞれの共通性

<私>はブイヨン公爵に会ったことがある。だがこのパーティーの日の午後に目にした時、それがブイヨン公爵だとは全然気づかなかった。ゲルマント侯爵の話を聞いていて始めて思い当たったのだった。忘れ去った人物ではまるでなく習慣・因襲に従って気を抜い…

Blog21・ゲルマント侯爵の激怒とプルーストと父親との対立構造

ゲルマント侯爵はドレフェス事件を巡ってドレフェス支持に回ったスワンを長々と非難する。これまで面倒を見てきてやった恩を仇で返すような男だと憤懣やるかたない激怒ぶり。 「『でもスワンについては、率直に言ってあの男どもにたいする振る舞いは言語道断…

Blog21・<プルースト><スワン><マスコミ言語>、それぞれの二重性

ゲルマント侯爵夫人はいつもパーティーの人気者。社交界入りを果たした新進の作家や劇作家が夫人のもとを訪れてきて是非近づきになりたいということなどは日常茶飯事だった。しかし夫のゲルマント侯爵は浮かぬ気分。嫉妬しているわけでは全然なく、そもそも…

Blog21・シャルリュスの暴露とプルーストの<暴露>との違い

ゲルマント公爵夫人とともにサロンを回っていると、再び「これから先もけっして間違えずに識別できる特徴のある声が聞こえてきた」。ヴォーグーベールの声だ。しかしなぜ「識別できる」ようになったのか。シャルリュスの大声との非等質的な対話を繰り返し耳…

Blog21・<私>が見たトルコ大使夫人の人格分裂的多数性

通例、人間は、多少の個人差はあるものの思春期を通過するうち、人間関係に対して一定の免疫を獲得する。<私>は偏屈な社交界の中で、それなりにせよ或る程度の免疫を持つことができた。知人友人たちが不意に露呈してしまう不注意な身振り・発言について、…

Blog21・プルーストのいう因果関係の<諸断片>性

社交界がいかに空虚なものかを語りながらプルーストは不意にこんなフレーズを挟み込んでいる。 「真の作家は、多くの文士につきもののばかげた自尊心など持たないから、つねに自分をことのほか褒めたたえてくれていた批評家の文章を読んでいて、ほかの凡庸な…

Blog21・プルーストの発見<植物界としての人間界>

<私>の目にふと、シャルリュスの同性愛相手ヴォーグーベールの姿が入った。エリート外務官僚である。シャルリュスと「同様の欠点をいくつか備えていたとしても、それをごく淡く反映していたにすぎない」とある。 シャルリュスの会話は同性愛者だと悟られる…

Blog21・プルーストにとって《可視的なもの》と《不可視的なもの》

シャルリュスに失礼な態度を取り続けていたことは確かだとしても、そのことで激怒するようなシャルリュスではないと<私>は考えていた。シャルリュスに対して失礼ではないかと叱責したのはあくまで<私>の両親である。なぜ叱責したのか、というより<私>…

Blog21・マニュアルとしてのゲルマント大公妃/プルーストと両親との決定的齟齬

ゲルマント大公妃の夜会に招待されることになった<私>。シャルリュスの紹介がなければゲルマント大公妃に近づくことは決してできないと言われていたにもかかわらず、あっさり招待状が届いたので出かけたのだった。本当だろうかと内心不安ではあったものの…

Blog21・横断的<生産装置>としてのプルースト

プルースト作品では<私>が語るという方法を取っているにもかかわらず、プルースト自身の語りとしか思えない箇所がしばしば出てくる。そのうち、おそらく避けられないと思われる部分が差し当たり二箇所ある。その点について述べたい。 (1)「これらソドミ…

Blog21・マッチョ的男性同性愛の大欺瞞と日米同盟

「ソドムとゴモラ」には色々な組み合わせが考えられる。男性の中の男性と男性の中の女性、女性の中の男性と女性の中の女性、男性の中の男性と男性の中の男性、女性の中の女性と女性の中の女性、女性の中の男性と男性の中の女性、男性の中の男性と女性の中の…

Blog21・<無数のまなざし>としてのシャルリュスを捉える<私>という<まなざし>

振り返ってみよう。シャルリュスが始めて<私>の前に出現した時のことを。身体の一部としてだった。<まなざし>としてである。ジルベルトに淡い恋心を抱きながらその姿を追っていた時、不意に何やらただならぬ<まなざし>が私に注ぎ込まれているのを感じ…

Blog21・シャルリュスの言説を追って11/シャルリュスが問いかけるアンチノミー(二律背反)

シャルリュスの態度は瞬く間に変容する。しばらくして読者はシャルリュスという名の一つのパラドックスを目にしていることに気づく。シャルシュスは「あれかこれか」ではなく「あれでもありこれでもある」状態を生きる。もっとも、アルベルチーヌのように異…

Blog21・シャルリュスの言説を追って10/<暴露・揶揄・侮辱・暴言・嘲弄・滑稽>としてのシャルリュス

ゲルマント公爵夫人に関心を寄せる<私>にシャルリュスは「ゲルマント大公妃の威光」の前ではたいした名ではないという。そこで、もし近づきになりたいのならと、こう続ける。「私と私の<開けゴマ>がなければ、大公妃のお屋敷には近づくことはできん」。 …

Blog21・シャルリュスの言説を追って9/パラノ的(偏執狂的)シャルリュスとスキゾ的(分裂症的)<私>

ますます態度を軟化させるシャルリュス。「あっ、そうだ!大事なことを忘れていた」と不意に言い、近いうちに再会する機会をとっとと設定しようとする。<私>との関係を「込みいった問題」と位置付け、その解決には時間がかかるという。とすればシャルリュ…

Blog21・シャルリュスの言説を追って8/なぜシャルリュスの多数性は可能なのか

二転三転するシャルリュスの言動。<私>を馬車で家まで送り届けるという。その後は「ブーローニュの森へ月見にでも行くとするか」とふいに思いついたかのようなことを口にする。同時にシャルリュスは「磁気をおびたような二本の指で私の顎(あご)をつまん…

Blog21・シャルリュスの言説を追って7

しゃべりつづけるシャルリュス。<私>を突き放したかと思えばたちまち<私>に居残るよう慎重な身振りを見せつける二重性。シャルリュスは狂気に陥っているのか?陥っている。バルベックで出会った時もそうだった。シャルリュスの言語の特徴だが、罵倒中傷…

Blog21・シャルリュスの言説を追って1

シャルリュスの言説は主に三箇所に分けて述べられている。一箇所ごとがとても長い。けれども言説には一貫性があり、ゆえに訴えていることは徐々に明らかになってくる。気になる点を少しずつ追っていこう。 「『労力を費やすに値する人のために骨を折ることほ…

Blog21・「制度としての顔」/「暴力としての愛」序論4

レヴィナスのいう<他者>には<他なるもの>という位置付けがなされている。前回引用した。 「レトリックがともなう洗脳を、煽動を、教育を放棄することは、他者の正面から、真の語りをかいして近づこうとすることである。他者の存在はその場合、いかなる度…

Blog21・「制度としての顔」/「暴力としての愛」序論3

プルーストは「写真という最新の技術」を利用してアルベルチーヌを固定しようとする<私>の思いに注釈を与えている。 「写真という最新の技術ーーーそれは、近くで見ると往々にして塔ほどに高いと思われた家並みをすべて大聖堂の下方に横たえたり、いくつも…

Blog21・「制度としての顔」/「暴力としての愛」序論2

小津安二郎監督「晩春」の中に「制度としての顔」を一挙に無効化させてしまう場面がある。娘役の原節子が結婚することを決心し父親役の笠智衆とともに京都へ記念の観光に訪れた際、二人は宿で「性を異にする親子が並んで眠るという状況」へ難なく入っていく…

Blog21・「制度としての顔」/「暴力としての愛」序論

「愛と嫉妬」というテーマ。ほとんどの読者は「愛する」とはどういうことかについて大いなる勘違いを犯してきた。プルーストはそれがどれほど暴力的かを明るみに出す。だからといって殴る蹴るといった暴力行為をともなうわけでは全然ない。だからなおさらア…