Hakurokin’s 縁側生活

アルコール依存症/うつ病/リハビリブログ

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

熊楠による熊野案内/鬼の一殺・応天門放火事件

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 平安時代の中ば頃まで早朝の政務は大内裏の「官(くわん)ノ司(つかさ)」で行われていた。「官(くわん)ノ司(つかさ)」の「官」は「太政官(だじやうくわん)」の「政庁」。今の京…

熊楠による熊野案内/三年目の亡霊

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 或る時、大和国(やまとのくに)に一人の女子がいた。「形美麗(かたちびれい)ニシテ、心労(らう)タカリケレバ」=「美少女でとても気立てがよく」、両親は大切に育てていた。一方、…

熊楠による熊野案内/鬼の領有権

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 皇族の名簿作成、季禄、衣服の支給などを職務とする部署を正親司(おほきみのつかさ)といった。その五位の者を「正親(おほきみ)ノ大夫(たいふ)」という。或る「正親(おほきみ)ノ…

熊楠による熊野案内/主殿寮長官の過去

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 宮中で湯沐・灯火・薪油・庭の清掃などを司る「主殿寮(とのもりづかさ・とのもれう)」。「源氏物語」成立から約百年後、「源章家(みなもとのあきいへ)」という人物が主殿寮(とのも…

熊楠による熊野案内/上司交代・呼び出された書記官

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 或る時、日向(ひうが)ノ守(かみ)が人事異動で都へ上京することになった。日向国には「新司(しんし)」=「新しい国司」がやって来る。その際、事務書類一式の引き継ぎが行われる。…

熊楠による熊野案内/物言う猫・踊る猫

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 アメリカ留学中の熊楠が森林の中で植物を採集中、急な吹雪に襲われ走って逃げようとしている時。生後一ヶ月足らずほどの迷子の子猫を見つけて拾ったが何度もポケットから落ちて出てくる…

熊楠による熊野案内/政治家一家・胎児の代償

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 熊楠は粘菌の活動形態についていう。世間の常識は活物を死物と見間違う。そのような錯覚に陥っていると警告する。 「粘菌が原形体として朽木枯葉を食いまわること(イ)やや久しくして…

熊楠による熊野案内/蛇、農耕神から食用そして貨幣へ

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 熊楠はいう。 「『今昔物語』など読むと、本邦でも低価な魚として蛇を食わせ、知らぬが仏の顧客を欺く事も稀にあったらしい」(南方熊楠「蛇に関する民族と伝説・蛇の効用」『十二支考…

熊楠による熊野案内/熊野の森と丹波への帰省

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 パンデミック下の帰省を既に何度か経験した日本。にもかかわらずほとんど何一つ懲りていない日本。次に上げる説話は遥か一一〇〇年以上も前の日本で帰省中に起きたエピソード。 妻の実…

熊楠による熊野案内/国道1号線外伝・必殺鈴鹿峠

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 熊楠は述べている。 「三重県阿田和(あたわ)の村社、引作(ひきつくり)神社に、周囲二丈の大杉、また全国一という目通り周囲四丈三尺すなわち直径一丈三尺余の大樟あり。これを伐り…

熊楠による熊野案内/「猿の恩返し」、その過剰=逸脱=アナーキー

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 或る時、九州の海浜でのこと。隣同士だが別々の家に仕えている使用人の女性が二人、いつものように浜辺の磯で貝や海藻類を拾いに出ていた。二人のうち一方の女性は二歳くらいの幼児を平…

熊楠による熊野案内/切断された母の手首・老婆老翁山神表層論

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 十月末の闇夜、或る兄弟が山に入っていつもの「待(まち)」を行っていた。「待(まち)」は古くからある猟法。高い樹上の枝の間に横木を渡し、その上に乗って鹿・猪などの獲物が下を通…

熊楠による熊野案内/鷲と蛇、そして貨幣を生む「蛇塚(ヘビヅカ)」の登場

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 「肥後国(ひごのくに)」(現・熊本県)の或るところに鷲小屋を設置して飼い育てている者がいた。家の前には榎の大木があった。古来、榎の大木は聖なる樹木とされていたが、そこに「赤…

熊楠による熊野案内/狗〔犬〕の恩返し・人柱と労働力との間=射殺された人形の問題

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 「狗山(いぬやま)」については前回述べた。普段から何頭かの犬〔狗〕を飼っておき、訓練し、猟師は山の奥深くに入る。鹿や猪を見つけると、連れて来た猟犬を巧みに操り獲物を咋殺(く…

熊楠による熊野案内/深山幽谷と大阪城「人柱」伝説

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 普段から何頭かの犬〔狗〕を飼っておき、訓練し、猟師は山の奥深くに入る。鹿や猪を見つけると、連れて来た猟犬を巧みに操り獲物を咋殺(くひころ)させて生業にする猟師のことを「狗山…

熊楠による熊野案内/ウミガメに美女を見た財務官僚の老従者

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 或る時、官位五位を持つ「大蔵(おほくら)ノ大夫(たいふ)」で「紀(き)ノ助延(すけのぶ)」という財務官僚がいた。若い頃から米を貸し付け利息を増やし、数年経つと四、五万石にも…

熊楠による熊野案内/蛇に睨まれた蝦蟆(かへる)と資本主義を忘れた日本政府

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 或る夏の日、三人ほどの貴人が連れ立って「染殿(そめどの)」の庭の築山の木陰で涼みながらおしゃべりに興じていた。その中に三善春家(みよしはるいへ)という男性がいた。蛇が大の苦…

熊楠による熊野案内/人間の重責・猫の間違い

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 熊楠は「人柱の話」の中で旧・加藤清正邸について「甲子夜話(かっしやわ)」の次の箇所を引いている。 「鳥羽侯〔稲垣氏〕の邸は麹町八丁目にありて、伯母光照夫人ここに坐せしゆゑ、…

熊楠による熊野案内/或る財務官僚と猫密室

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 平安時代半ば、藤原道長が政治権力の全盛期を誇っていた頃。「大蔵(おほくら)ノ大夫(たいふ)」(大蔵省五位の者)に藤原清廉(きよかど)という財務官僚がいた。実在人物。権力闘争…

熊楠による熊野案内/「迷(まど)ハシ神(がみ)」と鬼の渓谷

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 長和二年(一〇一三年)。三条天皇が岩清水八幡宮へ行幸した際に起こったとされる説話。類話は「宇治拾遺物語」に見えており内容は同じといってよい。異なるのはほんの数箇所しかない。…

熊楠による熊野案内/愛の居場所あるいは死んだ人妻の廃屋

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 身分は侍。だから都の貴人とまったく何一つ縁がないというわけではない。だがしかし、侍といってもただ単に身分がそうだというに過ぎない。大半の場合、これといえるほど確かな職を任さ…

熊楠による熊野案内/「河原院(かはらのゐん)」・開かずの扉が開いた時

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 説話の舞台は「河原院(かはらのゐん)」。平安時代半ば既に住人はいなくなり荒れ果てて廃屋化していた頃。 「河原院(かわらのいん)」。北は平安京を東西に走る「六条坊門小路(ろく…

熊楠による熊野案内/鬼はもういない・近江日野川「安義(あき)ノ橋」

回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 或る時、近江守(あふみのかみ)の臣下らが揃って「基(ご)・双六(すぐろく)」など「万(よろづ)ノ遊(あそび)」に打ち興じ、「物食(くひ)酒飲(のみ)」ながら盛大な宴(うたげ)…

熊楠による熊野案内/橋を越えた狐

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 平安時代。仁和寺(にんなじ)は大内裏の北東方向、太秦(うずまさ)の辺りに当たる。仁和寺から東方向へしばらく歩くと高陽川(かうやがわ)を渡ることになる。いつ頃からか、夕暮れに…

熊楠による熊野案内/「魔(ま)」=「間(ま)」の両価性

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 奈良の春日大社に出仕する社家のうち中家の五位とされる身分の者がいた。その甥に当たる「中大夫(ちうだいふ)」が遭遇した説話である。飼っていた馬が草を食(は)んでいるとふいに消…

熊楠による熊野案内/万葉・今昔・令和の狸(たぬき)

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 或る時、西国から京へ昼夜兼行で上ってきた飛脚がいた。「幡磨(はりま)ノ国ノ印南野(いなみの)」=「現・兵庫県明石市から加古川市周辺」に差し掛かった頃、疲れもあり日暮れてもき…

熊楠による熊野案内/貨幣化失格・敗者復活戦

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 次の説話は国名郡名ともに欠字。主要登場人物は或る兄弟。だが帯刀を許されていることから何らかの下級役人だったのだろう。さらに家に死者が出た場合、普通はすぐさま埋葬しなければな…

熊楠による熊野案内/近江唐橋鬼屋敷

前回同様、粘菌特有の変態性、さらに貨幣特有の変態性とを参照。続き。 妖怪〔鬼・ものの怪〕にも色々なタイプがある。人間に無数のタイプが見受けられるように。前回、「野猪(くさゐなぎ)」=「狸(たぬき)」に関する説話を見た。狸がまだ獰猛性を持つ動…