Hakurokin’s 縁側生活

アルコール依存症/うつ病/リハビリブログ

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

微視的細部8

主人公はエルムノンヴィルへの途中で「道に迷いそうになった」。意識が曖昧になる。「道しるべの板の文字が、ところどころかすれていたから」迷うわけではない。「道しるべの板の文字が、ところどころかすれていたから」といって、必ずしも迷う必然性は出て…

微視的細部7

演劇の中で突如として出現したアドリエンヌを目撃したあと、しばらく、主人公の思考は「現実か夢か」という境界線が消滅していく領域をさまよう。 「こんな記憶の細部をたどるうちに、いったいそれが現実のことなのか、それとも夢に見たものなのかわからなく…

微視的細部6

主人公はシルヴィとともにシルヴィの叔母の家を訪れる。シルヴィには主人公にはない茶目っ気がある。叔母にとってはもはや過去となってしまった場面を反復してみせようとたくらむ。「いつも鍵がかかっている引き出し」から何やらごそごそと取り出してくる。…

微視的細部5

シルヴィを再発見した主人公。というのもただ単なる地域社会の娘の一人というのではなく、今度は恋愛対象として、古代ギリシアの彫像と見違えるほど成熟した女性の姿形で、立ち現われたからである。かといって、修道院に入ったアドリエンヌのことを忘れてし…

微視的細部4

アドリエンヌが修道院へ入り寄宿生活を送ることになると当時に、主人公は恋愛対象から切断された事情のもとに置かれる。だがしかしこの切断は新しい接続とほぼ同時に行なわれる。それまで眼中になかったシルヴィがただ単なる地域社会の小娘ではなく、恋愛対…

微視的細部3

夜ごと反復される回想。 「思い出が夢うつつのうちによみがえり、ぼくにとってはすべての説明がついた。一人の女優に対する漠とした、希望のない恋、夜ごと開演の時間ともなればぼくを捕え、眠る時間になるまで放してくれないその恋心は、蒼白い月光を浴びて…

微視的細部2

どこでもいいのだが、人間は、ぼんやり居眠っていて不意に目覚めたとき、しばしば夢を見ていたことを思い出す。けれども夢の内容はもはや急速に遠のいていく。だが夢は、何か或る確固としたストーリを持つ一つの事件としてではなく、逆に無数に錯綜した支離…

微視的細部1

繰り返される世界恐慌。しかしそれは外的な事情から生じた偶然の事態ではまったくない。むしろ逆に内的諸条件から招き入れるべくして生じてきた必然的反復である。 「当時は知るよしもなかった、そうやってぼくらが、新たな君主制や宗教が登場したのちにも生…

遍在する廃墟/空虚の遍在31

一八三六年八月十日「ラ・ファランジェ」紙に掲載された無署名の記事をフーコーは引用する。「完璧な見取図」といえるのはなぜかというと、パリ中心部が「完璧」というにふさわしい合理性、経済策、効率性によって貫かれた近代都市の様相を示すに至っていた…

遍在する廃墟/空虚の遍在30

規律・訓練の場(学校、職場、病院、中間施設)の分散配置と内容面での拡充とともにだんだんはっきりしてきたことがある。おそらく世界は永遠に監獄を消滅させてしまうことはできないだろうという悲観的ではあるが現実的な事情である。 「〔6〕そのことで多…

遍在する廃墟/空虚の遍在29

十八世紀末から十九世紀前半いっぱいを通して社会の監禁網は加速的に整備されていく。ところがこの整備過程で市民社会からの妨害といったものはほとんど見られない。それについてはこれまで触れてきた通りである。取るに足らない些細な監視制度(たとえば職…

遍在する廃墟/空虚の遍在28

第三項目で改めて定式化された知-権力の《経済策》という戦略的あり方。「改めて」というのは、十九世紀以前の刑罰では《極度の残忍性》が恥とされてはおらず、むしろ刑罰(公開処刑)における《極度の残忍性》が一つの経済策として機能していたからである。…

遍在する廃墟/空虚の遍在27

規律・訓練の社会的一般化は学校、職場、病院といった領域へ接続されることによって、何も監獄内だけで特権的に施されるものではなくなる。だから規律・訓練がいつも実施されている「中間施設」は「免囚保護や、救済事業団体、居所指定、懲治集落施設(コロ…

遍在する廃墟/空虚の遍在26

規律・訓練を通して施される人間の家畜化。この過程には終わりというものがない。知-権力装置としての監禁的なものは全国津々浦々に創設設置されていくからというだけでなく、生まれてきた以上、どんな人間もそこを通らねばならなくなったからある。そこでは…

遍在する廃墟/空虚の遍在25

十三歳のベアス少年が被告として立ち裁判所で述べた言説は、ただちにマスコミによって分析を加えられ紙面上で詳細に発表されるやいなや「野生」の復権という事態として見出された、といえる。しかしただ単に人間が本来的も持っている野生的部分が改めて見出…

遍在する廃墟/空虚の遍在24

知-権力装置として組織化されていく非行性。社会の「十分の九」が下層階級に属する民衆からなるフランスでは、違法行為の「十分の九」が下層階級から発生してきたとしても何の不思議もない。ところが刑事司法によって裁かれ、警察=監獄に繋ぎ止められ、施さ…

遍在する廃墟/空虚の遍在23

階級社会の出現。それに伴う労働運動の側からの告発。マスコミの社会面〔三面記事〕はそれまでの性質を変える。もっとも三大階級(資本家、土地所有者、労働者)の出現は一八四八年二月の衝突によって始めて可視化されたわけだが、問題はその少し前にある。…

遍在する廃墟/空虚の遍在22

知-権力は《非行性》というものを新しく創造したと言える。誤解してならないのは、ただ単なる「密告、隠密(いぬ)、売淫、<閉じ込め>」だけならずっと以前からあったのに反し、十八世紀末から十九世紀に明確化されたのは、それら違法行為を知-権力の側が…

遍在する廃墟/空虚の遍在21−2

さて、ヴィドックとの比較において対称的なラスネールについてはこうだ。 「その栄光の根拠は彼の言行に表明された、違法行為と非行性とのあいだの顕著な相互作用に大いに存している。詐欺、脱走、こそ泥、投獄、獄中での友情の再開、相互の脅喝、数々の再犯…

遍在する廃墟/空虚の遍在21−1

フーコーのいう非行性というものはただ単なる非行的行為だけでは何らの意味もなさない。知-権力装置の中で活用可能になる非行性は、差し当たり次の条件の中で出現する。 「三つの項(警察=監獄-非行性)が相互に依存しあい、しっかもけっして中断しない回路…

遍在する廃墟/空虚の遍在20

新しく見出された「非行性」とその活用について。規律・訓練という主題とはかなりかけ離れたきたように思えるけれども、しかしかけ離れて見えるところでこそ、規律・訓練はよりいっそう洗練された姿で出現する。 「他の違法行為から切離されもし同時に取扱い…

遍在する廃墟/空虚の遍在19

規律・訓練とは差し当たり関係がないように見える領域で違法行為の新しい形態が一般大衆の中から生じてくる。 「十八世紀から十九世紀の転回期には、しかも新しい違法行為の危険が生じた。いやもっと正確には、民衆的な違法行為が新しい規模で展開するといえ…

遍在する廃墟/空虚の遍在18

<一望監視装置>(パノプティコン)が社会的なそれぞれの場で与えた学問的あるいは学術的な意味作用について。知-権力装置としての<一望監視装置>(パノプティコン)の作用が最も一般的でごく身近な場で出現するのは学問的あるいは学術的な作用が日常生活…

遍在する廃墟/空虚の遍在17

<一望監視装置>(パノプティコン)の法律=政治的な面での作用について。<一望監視装置>(パノプティコン)は、まず法律=政治的な社会構造が前提としてあって、さらにそれに「従属する」ものではなく、ましてやそれを「延長させた」ものでもない、という…

遍在する廃墟/空虚の遍在16

<一望監視装置>(パノプティコン)の採用による規律・訓練の広汎な社会化が実現され、さらに監視者は常に不可視性の領域を形成しており、だから中央監視台の中にいるのは任意の誰でも構わず、いない時間があっても問題ない。そういう知-権力がすべての国民…

遍在する廃墟/空虚の遍在15

<一望監視装置>(パノプティコン)の機能は考案者であるベンサムが頭の中でだけ当初空想していた具体的装置の意図を越えて有効活用できる拡張可能性を孕んでいた。監視する者はほとんどまったく誰もおらず、もちろん匿名で、没個人化した権力装置として機…

遍在する廃墟/空虚の遍在14

<一望監視装置>(パノプティコン)の機能についてフーコーは差し当たり以下のようにまとめている。 「権力の自動的な作用を確保する可視性への永続的な自覚状態を、閉じ込められる者にうえつけること。監視が、よしんばその働きの中断があれ効果の面では永…

遍在する廃墟/空虚の遍在13

さて、フーコー権力論の中で最も有名な「<一望監視施設>(パノプティコン)」。一方に不可視化された監視の眼があり、他方にいつも完全に可視化されていなければならない客体としての囚人がいる。 「ベンサムの考えついた<一望監視施設>(パノプティコン…

遍在する廃墟/空虚の遍在12−2

監視する側は常に不可視であること。逆に、監視される側は絶え間なく可視化され観察されていなければならないということ。規則化し儀式化した試験を通して規律・訓練はいつどこででも実施されているということ。すべての人間はいつもすでに個人という身体と…

遍在する廃墟/空虚の遍在12−1

知-権力装置は一方で、犯罪者をいつも監禁監視しておくための拘禁機関を設立した。他方、市民社会はそのような拘禁機関の外で、一般的な日常生活の中で「試験」という制度に繋ぎ直されることになった。フロイトは「軍隊」と「教会」とを集団心理の代表的なも…