河原町の古書店で約束を済ませる。そこできょうも終わりそうだ。店を出ると太陽がまぶしい。土曜日に見渡せば、橋を渡るとこうも賑わっているのかと。
寺町をぶらぶら歩いて二条へ出る。
市役所脇の雑居ビルへ入りホットラインに立ち寄る。
癖なんだろう。
青に白抜きのHOT LINEの いつも少しばかり埃がかった看板を見ると、それまでまるでその気がなかったのに、ついうっかり吸い込まれてしまう。僕にとって中古盤ジャズの魅力はかなりのものだ。
掘り出し物はと言えば。
これが、あった。
キングのGFXシリーズでPacificのBILL PERKINS「JUST FRIENDS」。
めずらしい。前に覗いたときには確かなかったはずだ。
中古店でこれを見かけたら「即買い」だと或るジャズ評論家が太鼓判をおしていた逸品である。
¥2800ー
たいへん残念なことに今の僕には持ち合わせがない。¥2800すらない。仕事がないということだ。今回はあきらめるしかない。
ほかに、LOU DONALDSON「LOOK OUT」、HANK MOBLEY「PECKIN’TIME」も出ている。ジャケットの状態がとても良く、もちろんデザインも最高で喉から手が出そうになったが辛くもこらえ涙をのんで両方ともエサ箱に戻してきた。次にくるときは誰かに買われてしまっているにちがいない。でも聴いてもらえればそれでいいか。
ふっきれない無念さはわだかまり澱む。河川敷で淀川を眺めていた大阪の下宿時代とはすっかり違うわけなのだが。雑居ビルを出るや五月の空はこんなにも青い。アーケードに覆われた寺町京極の大きな口が逆に黒々と見えるほど。そこから人が頻繁に出入りしている。足元では躑躅の紫がひるがえる。立体感にゆらゆらとかげらう。
もっとも地図だけ見ればじつは狭い街の一角というほかないのだが、それにしてもこのコントラスト。あまりに近くあまりに遠い街というもの。僕はシャッターを切らない。